遠すぎる君
俺はしおりとさっきまで繋がっていた携帯を見つめていた。
最後は一緒に切ることになったけど、どうしても『切』ボタンは押せなかった。
いつまでもしおりと繋がっていたかった。
俺は多分決勝に出られないだろう。
だけど、何も知らないしおりは俺のシュートが「格好いい」と褒めてくれ、俺の好きなサッカーが「楽しい」と言ってくれた。
それだけでもういいじゃないか。
俺は十分やったんだ。
それでしおりは認めてくれたんだ。
あとは部長に任せよう。だって俺には最悪来年があるから。
少々後ろ向きだけれど、そんな風に思えたのはしおりとの会話のお陰。
しおりは俺の心を鉛のように重くもすれば、雲のように軽くもする。
やっぱり好きだからだよなぁ……
今日、一目でも会いたかった。
見つけられなかった自分をちょっと責めた。
来週も会えるのか。
憂鬱な次の週末が、少し楽しみになった。