遠すぎる君

「高坂、お前に回す。頼んだぞ。」
部長は俺の背中を叩いて、小さな声でこう囁いた。

部長はそれからはゴールを狙うことをやめ、出きるだけ俺にまわしてきた。

だけど、エースの部長だけでなく俺も2試合ゴールを決めた事もあり、敵も自由にはしてくれない。

やっぱり今日もいつも以上に足を使うことになった。
ましてや二点先取されている。
俺たちは走って足掻いて、一点でも取らなければいけなかった。

そして、ようやくチャンスが掴めた時、迷いもなくゴールを狙った。
それは、俺の感覚ではゴールが決まる筈だった。
だけど、俺蹴ったボールはわずかに外れ、ゴール枠に当たった。

「え?」
俺がそう思った時、右足首からじわりと痛みが上がってきた。

先週確かに軽く痛めた。だけど一週間とくに酷くなる様子はなかった。

俺は痛みを無かったことにして、その後も何度もシュートを試みたが、決まらない。

違和感

それを部長に伝えようとしたが、その部長は辛そうな顔をしていた。
もしかして、部長もまた……?

腰痛が酷くなっているようなら、部長にゴールは狙えない。

俺は覚悟を決めた。
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