遠すぎる君


笛がなった瞬間、冷静な自分がいた。

何人か縺れた場所で、優勝したチームのやつらは飛び上がって走っていく。

俺はその場に座り込んだまま歓声を聞いていた。

自分の足首を見てみると、僅かに腫れているようだ。
立てるだろうか。

周りを見ると、先輩たちは泣いたりそれを慰めたりしてる。
観客は皆立ち上がって、喜んだり悔しがっている。


あぁ、終わったんだな

ただ、そう思った。

ゴール近くにいた山下先輩はゆっくり歩いてきて手を差し伸べた。
「立てるか」

一瞬戸惑ったが、差し伸べてくれた手を取り、立ち上がる。
少し痛むが歩けないほどではない。

「お前、よくやったよ。凄かった。お疲れ。」
そう言って先にベンチに戻っていった。

俺に悪態ばかりついていた先輩がそんな風に言ってくれて、俺は初めて泣きたくなった。

負けたからじゃない、認められたから。

ただ俺のサッカーを認めてもらった気がしたから。
< 125 / 136 >

この作品をシェア

pagetop