遠すぎる君
笛がなった瞬間、冷静な自分がいた。
何人か縺れた場所で、優勝したチームのやつらは飛び上がって走っていく。
俺はその場に座り込んだまま歓声を聞いていた。
自分の足首を見てみると、僅かに腫れているようだ。
立てるだろうか。
周りを見ると、先輩たちは泣いたりそれを慰めたりしてる。
観客は皆立ち上がって、喜んだり悔しがっている。
あぁ、終わったんだな
ただ、そう思った。
ゴール近くにいた山下先輩はゆっくり歩いてきて手を差し伸べた。
「立てるか」
一瞬戸惑ったが、差し伸べてくれた手を取り、立ち上がる。
少し痛むが歩けないほどではない。
「お前、よくやったよ。凄かった。お疲れ。」
そう言って先にベンチに戻っていった。
俺に悪態ばかりついていた先輩がそんな風に言ってくれて、俺は初めて泣きたくなった。
負けたからじゃない、認められたから。
ただ俺のサッカーを認めてもらった気がしたから。