遠すぎる君

俺は臆することなくしおりに言えた。
泣きながら……だけど。

しおりに伝えられたら、肩の荷が降りて少し落ち着いた。
泣き顔を見られたくないから、しおりの方は見れずに暮れかかってきた空を見上げた。


「……じゃあ、もう言ってくれないの?」

え?と思いしおりを見ると、彼女は泣いていた。

「負けたら……また……離れていくの?せっかく、近付けたと思ったのに……」

俺は言葉を無くしてしおりの綺麗な涙を見つめた。

「ネックレスもらって嬉しかったのに。試合に誘ってもらって嬉しかったのに。
だったらなんで会いに来たりしたの!謝りたかったから?!
ひどいよ!自分勝手!サイテー!」

もう涙でぐちゃぐちゃだった。
俺は呆気に取られていて、ただ見ているだけ。
だってこんなしおりは初めて見たから。

いつも何かを諦めて、悲しそうな顔をして黙っていたしおりが、俺を責めてなじっている。

だけど、それには俺への好意がひしひしと感じられて、めちゃくちゃ可愛いと思った。

俺、しおりの事何にも知らなかった。
何を見ていたんだろう。

たまらず俺はさっきと逆に、しおりの頭を自分の胸に引き寄せた。
俺に抱き締められると大人しくなった。

俺はもう迷わない。
今日の試合で決めたんだ。
最後のゴールは決められなかったけど、自分の事もちゃんと見えた。
俺は欲しいものをちゃんと掴まなくちゃ、前に進めないんだ。

しおりの髪に手を入れながら、深呼吸した。

「俺、言ってもいいのかな?」

しおりは固まったまま動かなかった。

「好きだって言ってもいいか?」

しおりからの返事はなく、俺が少し焦れてきた時、
俺の背中に軟らかな掌のぬくもりを感じた。

「ズルいよ……遼……。ズルすぎるよ~」


俺たちの距離はようやく無くなったんだ。



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