遠すぎる君
「じゃあ……期待しないで待ってるね!」
こんな可愛くないことしか言えない私に「ちぇっ」と拗ね始めた遼。
ごめんね。
こんな風にしか言えなくて。
だって嬉しすぎて茶化してないと涙が溢れそうなんだもん。
ブランコの鎖をグッと握り、わずかな星と月が見える空を仰いだ。
すると、私の手が握った鎖のすぐ上を掴んだ遼は私の視線を遮り、深い優しい声でこう告げた。
「じゃあさ。期待しなくていいから、待ってて。」
目の前のその瞳に吸い込まれるかと思った。
だけど、その前に堪えていた涙がこぼれ落ちた。
いつまでだって待てそうな気がした。
だから「待ってる」と言いたかったのに、その前に唇を塞がれた。
その唇からは遼の優しさと決意と愛が溢れてきた。
これが私達の2度目のキスだった。