遠すぎる君
サッカー部のミーティングが早めに終わり
教室に帰ってきた昼休み。

久しぶりにしおりの楽しそうな声が聞こえた。

「嬉しい!楽しみだね~」

女子何人かでカラオケに行くようだった。

俺が必死こいてる時にカラオケか…

と思ったけど

俺がしおりを放ったらかしてるんだ。
文句言う筋合いじゃないよな。

諦めにも似た笑いが出てきた。

まともにしおりと話さなくなってどれぐらいなのか。
もう何ヵ月も離れている気がする。

触れたい。
キスしたい。
しおりに笑ってほしい。

そう思うんだけど
今はサッカーに専念したい気持ちもある。

勝手も負けてもあと1ヶ月ほど。
それが終われば引退なんだ。


どちらも大切なのに
1つずつしか追えないなんて。

高校に入ったら
もう少し大人になったら
両方追えるような器用な男になれるだろうか。

とにかくいまは精一杯頑張ろう。
そして自分の納得のいく結果を出してみせる。

そうしたら
しおりを
俺の天使を
力一杯抱きしめるんだ。

それを誓った次の日
俺達は地区予選を勝ち進んだ。

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