遠すぎる君
夏休みはずっと地元の図書館で過ごしていた。

涼しいし静かだし
勉強にもってこい。

そろそろ関東大会かな。
優勝したかな。
次は全国かな。

遼のことを思うと苦しくなるんだけど
夏休みになって顔を合わせないおかげで
少しだけ楽になったみたい。

学校に行かないから大会の結果も聞かないし
知ろうともしなかった。
遼と私の間には違う時間が流れていた。

8月お盆の前の登校日。

校舎から垂れ幕はたくさん掛かっているが
サッカー部のものは…

あった!

祝 サッカー部 関東大会 準優勝

準…優勝…?

そこで職員室の横の掲示板へ急ぐ。

スコアが張り出されていた。

PKで0-1

負けた…

終わったの…?
終わってしまったの…?
遼はやり切れたの…?

答えの出ない疑問を抱えたまま
教室へと向かおうと振り返ったとき
登校してきた遼と目が合った。

遼はすこし目を見開いて
何か言いかけたけど
掲示板をチラッと見ると口をつぐんで
私の横を通りすぎた。

彼の背中を見ていた。

やりきったの?

応援も行かなかった。
結果も知らなかった。


そんな私に
今さら何か声をかけることは許されないと思った。


そしてその日、
進路に関する書類を担任に提出した。
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