遠すぎる君
関東大会 準優勝

これほど屈辱に満ちた垂れ幕があるものか…

校舎にかかったそれを見上げる。
悔しい気持ちで上履きに履き替えた。


あの日、俺の中学でのサッカーは終わった。

本当は勝ちたかった。
全国へ行きたかった。
でもあの決勝。内容は悪くなかったと思う。
少なくとも俺の中では昇華された。

そして次に向かうはしおり。

しかしその日
しおりから連絡はなかった。

そして迎えた登校日。
今日はしおりに声をかけよう。
そう思っていると職員室の前で早速彼女を見つけた。

少し髪が短くなっていて
それでも彼女だとすぐにわかった。
久しぶりで緊張した。

彼女は振り向き俺に気付いた。
目が合った瞬間
世界が止まったかのように思えた。

会いたかった…やっと…

名前を呼ぼうとしたその時、
視界の端に入った試合のスコア表

一瞬で悟った。

彼女は知らなかった。
あの試合を見ていなかった。

観客席にいると
俺を見てくれていると

負けた俺を
すべてが終わるまで距離をおきたいと言った俺を
気遣って連絡してこないのだと

勝手に勘違いをして

なんて間抜けなんだ。


絶望と彼女への怒りで
もう今は何も話すことはできなかった。

俺が部活に専念していた間に変化した
彼女を取り巻く状況にも
気付こうともしなかった。
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