遠すぎる君
永沢くんは帰ろうとしない。
ここまでは彼も知っている話。
でも遼のことは…
異性には、いや美幸以外にはあまり聞かれたくなかったのに。
私の気持ちを汲んでくれたのか
美幸は「あ…今更だけど永沢くんは帰って?」
すると彼は「いや、俺も聞きたい。」しれっと言う。
…そこは遠慮するとこでは?
美幸も「遠慮してよ。」と言うも
永沢くんは「高坂の話を持ち出したの、松井さんじゃん。俺だって気になってたんだもん。」
「永沢くんには関係ない!」
「このままじゃモヤモヤする!」
「勝手にしとけばいいでしょ!」
なんだかさっきまでの深刻な雰囲気がまるでなくなって
この二人…泣いてる私の前で
いったいどういう神経してんの?
と呆れてしまった。
言い合いが終わったのか、
二人とも私をじっと見る。
もう諦めの境地だった。
「…6月にサッカー部の練習試合があったんだけど…」
「あぁ、あの点数取れずに負けたやつ?」
永沢くんも頷いてる。
「あの後、しばらく一緒に帰れないって言われて。」
「サッカー部、躍起になって励んでたもんな!」
「メールも来なくなった。」
「……はぁ?」
二人がハモったのが可笑しかった。
「笑い事?なんでメールも無し?」
「多分、真面目な遼のことだから
サッカーに専念したかったんだと思う。
OBの先輩に『浮わついてる』って言われたみたいだし。」
美幸は唖然として「アイツ…馬鹿…?」と呟いた。
「負けたのは私と付き合ってたから…
皆に罪悪感があったんじゃないかな?エースとして…」
美幸は勢いよく立ち上がって
その反動で私はベンチから転げ落ちそうになった。
「はっ!なにがエースよ!そんなエース、ちゃんちゃらおかしいわ!
なに?しおりのせい?
アイツそんなんでしおりに告白してきたの!
許せない…」
一気に捲し立て、
ギリギリと歯を噛み締めている。
あっという間に遼の評価が地に堕ちていくのを見て
あわてて言い直す。
「いや、ほら!そうでなくて!
遼がそう思ってる訳じゃないから!
でも周りの評価はそうだったみたいで!
遼はただ、サッカーに懸けたかったんだよ、中学最後だし…」
必死でそこまで言うと
美幸は信じられないという顔で
口を開けていた。
「……ま、いいわ。それで?」
眉間にシワが寄ったまま
話を先に進めろと促される。
「その後の誕生日はどうしたの?
彼氏もちのアンタに気を使って
前日に祝ってあげたのに。」
「前日にお母さんに話聞いて…
それどころじゃなくて…」
「誕プレは?メールは?」
もはや尋問…
「無かった。ていうより私の誕生日知らなかったと思う。」
もう美幸の顔は般若のようだ。
握りしめた右手は白くなるほど。
「…っっ!あのヤロ~!
ぶっ殺してやるっ!」
脅えている永沢くんを横目に
私は続ける。
「私も相談できなかったから。
必死になってる遼に遠慮して連絡できなかった。
高校に行けないかもって思って
ずっと地元の図書館で勉強してて
自分のことでイッパイで試合も応援に行けなかった。」
できるだけ冷静に冷静に話した。
「サッカーが終わったら連絡くれると思ってたんだ…
…でも…音沙汰なくて…」
もう最後は消え入るように言葉を吐いた。
「もう、いいのかな…と思っちゃった…
それに春になったら別々だしさ…」
しーんと静まり返った。
ここまでは彼も知っている話。
でも遼のことは…
異性には、いや美幸以外にはあまり聞かれたくなかったのに。
私の気持ちを汲んでくれたのか
美幸は「あ…今更だけど永沢くんは帰って?」
すると彼は「いや、俺も聞きたい。」しれっと言う。
…そこは遠慮するとこでは?
美幸も「遠慮してよ。」と言うも
永沢くんは「高坂の話を持ち出したの、松井さんじゃん。俺だって気になってたんだもん。」
「永沢くんには関係ない!」
「このままじゃモヤモヤする!」
「勝手にしとけばいいでしょ!」
なんだかさっきまでの深刻な雰囲気がまるでなくなって
この二人…泣いてる私の前で
いったいどういう神経してんの?
と呆れてしまった。
言い合いが終わったのか、
二人とも私をじっと見る。
もう諦めの境地だった。
「…6月にサッカー部の練習試合があったんだけど…」
「あぁ、あの点数取れずに負けたやつ?」
永沢くんも頷いてる。
「あの後、しばらく一緒に帰れないって言われて。」
「サッカー部、躍起になって励んでたもんな!」
「メールも来なくなった。」
「……はぁ?」
二人がハモったのが可笑しかった。
「笑い事?なんでメールも無し?」
「多分、真面目な遼のことだから
サッカーに専念したかったんだと思う。
OBの先輩に『浮わついてる』って言われたみたいだし。」
美幸は唖然として「アイツ…馬鹿…?」と呟いた。
「負けたのは私と付き合ってたから…
皆に罪悪感があったんじゃないかな?エースとして…」
美幸は勢いよく立ち上がって
その反動で私はベンチから転げ落ちそうになった。
「はっ!なにがエースよ!そんなエース、ちゃんちゃらおかしいわ!
なに?しおりのせい?
アイツそんなんでしおりに告白してきたの!
許せない…」
一気に捲し立て、
ギリギリと歯を噛み締めている。
あっという間に遼の評価が地に堕ちていくのを見て
あわてて言い直す。
「いや、ほら!そうでなくて!
遼がそう思ってる訳じゃないから!
でも周りの評価はそうだったみたいで!
遼はただ、サッカーに懸けたかったんだよ、中学最後だし…」
必死でそこまで言うと
美幸は信じられないという顔で
口を開けていた。
「……ま、いいわ。それで?」
眉間にシワが寄ったまま
話を先に進めろと促される。
「その後の誕生日はどうしたの?
彼氏もちのアンタに気を使って
前日に祝ってあげたのに。」
「前日にお母さんに話聞いて…
それどころじゃなくて…」
「誕プレは?メールは?」
もはや尋問…
「無かった。ていうより私の誕生日知らなかったと思う。」
もう美幸の顔は般若のようだ。
握りしめた右手は白くなるほど。
「…っっ!あのヤロ~!
ぶっ殺してやるっ!」
脅えている永沢くんを横目に
私は続ける。
「私も相談できなかったから。
必死になってる遼に遠慮して連絡できなかった。
高校に行けないかもって思って
ずっと地元の図書館で勉強してて
自分のことでイッパイで試合も応援に行けなかった。」
できるだけ冷静に冷静に話した。
「サッカーが終わったら連絡くれると思ってたんだ…
…でも…音沙汰なくて…」
もう最後は消え入るように言葉を吐いた。
「もう、いいのかな…と思っちゃった…
それに春になったら別々だしさ…」
しーんと静まり返った。