遠すぎる君
なんだって?
いなくなる?

「な、なんでだよっ!」

「これ以上は本人から聞いてよ!個人情報なんだから…
だから今は必死に勉強してんのよ。
もう卒業まであんまり来ないから…」

言いたくても言えない…そんな雰囲気だった。
ものすごく悔しそうに泣くのを我慢しながら

「私はあんたなんか大っキライ!
絶対許せない!
しおりが一番辛いときに背中向けて!

受験なんて嫌だって
星蘭にいたいって泣いてたのに…っっ

何ヵ月も放ったらかしにして…
しおりのことわかろうともしないで…

サイテーだよ…アンタ!

私もだけどっ…」

机に突っ伏して泣き出してしまった松井を見て
俺はもっと早くに勇気を出すべきだったと思った。

そこにあると思っていたもの

もう遠くに行ってしまった後なのか



その後、松井と二人で一言も話さず下校した。
松井の目が赤く腫れていたから
道行く人はビックリしたと思う。

松井は駅で別れる際

「別れるならちゃんとしてやってよ。
アンタ達、無器用すぎ。
しおり、あの時から前に進めてないから。」

そうポツッと言った。

「あの時…?練習試合か…」

「違う。誕生日だよ…外部受験を決めた日…だと思う」

誕生日…

「なんで誕生日くらい覚えてなかったの?
ほんと…恨むよ…しおりのこと好きだったくせに…」

肩を落として改札に入っていって見えなくなった。
俺はずっと立ち尽くしていた。

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