遠すぎる君
遼はサッカー部レギュラー
私は帰宅部

当然帰る時間も違う。

付き合い始めてからは
私が遼の帰りを待つのが日課になった。

サッカー部の練習を見ていたり、
図書館で本を読んだり。

待つのは苦痛じゃなかった。

「ごめん、お待たせ!」

汗だくユニフォーム姿の彼の笑顔を見ると
一日で一番幸せな時間になるんだから。

帰りにハンバーガーショップでジュースを飲んだり
公園で長話したり

短い時間だけど楽しく過ごした。



付き合って1ヶ月も経った頃
暗くなった公園で優しくて不器用なキスをくれた。

ドキドキで心臓が飛び出しそうだったけど
遼もメチャクチャ照れていて余裕がなく
二人で笑った。

そして肩を寄せあって幸せを噛み締めた。


彼の笑顔、優しさ、サッカーにかける情熱
無器用なまでの頑固ささえも
大好きになっていく。

毎日が特別になっていく。

ほんの一ヶ月前までは
こんな生活とは無縁だった。

来月の誕生日。
日曜日だけど
部活休んでもらえないかな…

ま、サッカー馬鹿の遼には無理かな。

クスッと一人笑いが漏れる。

せめて覚えていてくれたらいいなぁ…
プレゼント用意してくれたりなんかして~!

ダメダメ!
気が利かなくて粗雑な遼に
がっかりすることにもなりかねない…

それでも少しの期待を胸に秘め
カレンダーを眺めていた。


そんな日々が突然終わるなんて知らずに。
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