遠すぎる君

クラスメートが持ってたしおりのチョコと
同じ包装のものが靴箱に入ってた。
朝、しおりの机の横にかかっていた大きな紙袋と共に。

告白つきのチョコは受け取らなかったけど
勝手に置かれていたチョコは仕方なく持ち帰らないといけない。

しおりは自分のチョコを配り終えた後、
俺の靴箱にチョコと紙袋を入れておいてくれたんだろう。

しおりの優しさに胸が痛んだ。

しおりがくれた紙袋に他の女の子からのチョコを入れて帰る。


さっきの永沢の言葉を思い出した。

『最低野郎だよ』

ほんとだな……

情けなくて笑いが込み上げる。

俺は何をやってるんだ。
しおりに言いたいことも言えず
好きで一緒にいたくて幸せにしたくて
でも付き合ったら悲しませてばかり。

しかも、今は気を使わせてて。

永沢の足元にも及ばない。

帰ってすぐ
チョコはお袋に渡し、
しおりのだと思われるチョコだけを食べようと
部屋で包装紙を丁寧に剥がす。

トリュフじゃないな……

小さな小さなチョコケーキ……

俺のだけ違うのだろうか。

わずかな期待が胸に沸き上がってくる。

そのチョコケーキを食べようと箱から取り出すと
その下にメッセージカードが置かれてあった。

バッと乱暴にも急いでカードを掴み、
目を通す。

ほんの数文字だったけど

何度も読み返す。



気が付かないうちに頬を涙がつたって
座っている絨毯に落ちた。

こんな言葉足らずで
こんな自分勝手な俺を

「……っ…」


『好きです 元気で』

カードを握ったまま


しおりの苦しみに気づいてあげられなかった俺

俺には頼れず、自分で立ち直ってしまったしおり

不甲斐ない自分が悔しくて
俺は両手で顔を覆って
声を出して泣いた。
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