遠すぎる君

公立の東高は今まで通った青蘭とは全く違っていた。

たった二棟だけの古びた校舎
長年モデルチェンジしていないダサ目の制服。
学食も購買も運動場でさえ
設備は整っていなくて簡素だった。

初めこそ「今の私には相応しいんだ」と自嘲気味に捉えていたけれども、
何ヵ月も経った今、
住めば都……

そして受験を勝ち抜いて自らの力でこの高校に入ってきた生徒たちは
皆自信に満ちていてキラキラしていた。

自分の力でこれからの未来を切り開くんだ。

流されない強さをここで感じる。

ここに入学できてよかった。

今は本当にそう思う。



「しおりちゃん!お待たせ~」

日直である真紀ちゃんが
職員室に日誌を持ってくのを待って
一緒に歴史研究部へ行く。

この東高はなにかしらの部活に入らないといけない。

運動が得意でないし
こっそりとバイトもしたいので

活動が少ないクラブのひとつへ入部。

歴史小説とかも好きだし、大河ドラマも見る。

だからいいかな…と入部してみると
偶然にも同じクラスの真紀ちゃんが既に入部しており、
意気投合して今やお弁当も一緒に食べる友達に。

真紀ちゃんと同じ中学だった早苗ちゃんとも仲良くなって
3人で居ることが多い。


歴史研究部は全部で5人。
5人って部活として成り立つのかと思うけれど、
さすが進学校の東高。
歴史を研究するという勉学に前向きなクラブを廃部にしたりはしない。

高尚なこのクラブのメンバーは
三年生が三人と一年が二人。

部長の高野先輩。
眼鏡の歴史オタク。
ひょろっと背の高いガリガリ君だ。

その幼馴染みの岸田先輩。
こっちはさほど背は高くないけどなかなかのイケメンさん。
運動部みたいなガッシリ系じゃないけど
色白で指先の所作まで綺麗なまぁ美男子。

そしてなぜか一輪の百合……のような景子先輩。
中身はヒマワリみたいなんだけど。

この人がなぜこんなところに居るのか、謎。

本当に流れるような髪も目鼻立ちもしっかりしてるのに上品で。
でも性格は明るくってわざと乱暴な言葉遣いがまた親近感沸くんだ。

岸田先輩の彼女か?
真紀ちゃんといつもこの話題。

直接聞いてみたいんだけど、
オタクの高野先輩がどうやら景子先輩のことを意識しているようで、
とても「岸田先輩と景子先輩は付き合ってるんですか?」とは聞けない…


< 43 / 136 >

この作品をシェア

pagetop