遠すぎる君
「来月の引退の時、
皆でどこかいきたいって景子が言うんだけどさ~」

「引退か……先輩たち居なくなると寂しいですね……」

真紀ちゃんとか二人になっちゃう。

「ほんと?寂しい?嬉しいな!」

「二人でどうしよう……」

「ま、俺らも結局は顔出すと思うよ。受験の息抜きに」

「先輩はどこを目指すんですか?」

「うーん。落ちると恥ずかしいんだけどK大の法学。」

「K大!?しかも法学部!すごいっ!」

「いや…だから落ちたら恥ずかしい…」

「目指すだけでもすごい~!」

こりゃめちゃくちゃ頑張らなきゃな、と
岸田先輩は頭を掻いていた。

もしかして…
「景子先輩とかもそのレベル?」

「あ~あいつはT大の教育学部志望。小学校の先生になりたいんだって。」

みんな、しっかりと自分の未来を捉えてるんだ。

「高野先輩は?」

「あいつもT大じゃないかな。」

景子先輩と一緒…偶然?それとも

「先生になりたいのかな?」

「いや、学部は違うと思う。」

「…………」

ま、それよりさ
岸田先輩は話題を元に戻した。

「行くとこ、景子と真紀ちゃんとできめちゃっててよ。
俺らはどこでもいいからさ。
どーせ景子には逆らえないし。
一応歴史に関係あるとこでね!」

「はい。明日、相談してみますね。」


しばらくして先輩は帰っていった。

するとすぐにマスターが帰ってきた。

「マスター。気を使っていただかなくても
私たちはそういう関係じゃないんですけど……
それより私一人だと不安で。」

と、いつも思ってることを言ってみた。

「しおりちゃんなら大丈夫。
そろそろ食事メニューも教えてあげるね。
それに……

いなくなるのはささやかなおじさんの楽しみなんだよ~」

フフフ……と楽しそうに厨房にエプロンを付けに入って行った。

楽しみ?たばこ……は店内で吸ってるし
パチンコでも行くのかな?

と岸田先輩が使ったコーヒーカップを洗いながら
思った。










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