遠すぎる君
古びた一画にある部室。

そこで部員全員参加の歴史探求ツアーの詳細を決めていた。

名ばかりのツアーなんだけれども。

そこにいるは女三人。
高野先輩と岸田先輩は帰宅へと追いやられた。景子先輩に。

「こんなもんだよね。」

「ま、5人だし、あとは適当ってことでいいですよね~」

景子先輩の言葉に真紀ちゃんも頷く。

「この最後に行く神社、縁結びでも有名なんですよね~楽しみ~」

真紀ちゃんが嬉しそうに言うから

「なに?真紀は誰かと縁結びたいの?」

景子先輩が何故か焦って身を乗り出した。

「そりゃあ~好きな人ぐらいいますよ……」

頬を染めてニコニコとしている。

「真紀ちゃん、ほんと?私初耳なんだけど。」

友達の恋バナって楽しいもんだ。
誰なの?私が知ってる人?

矢継ぎ早に質問攻めしていると
視界の端で景子先輩が眉間にシワを寄せていた。

質問を止めて景子先輩に向き


「……どうしたんです?」

と聞くと

「……いいのよ。続けて……」

と言われたが、とても続けられる雰囲気ではない。

真紀ちゃんも頭をペコッと下げた。
「こんな話、イヤでしたか?すいません…」

「ううん。違うの。ごめんごめん。」
あわてて両手をブンブン振って
はぁ~っと息をついてから
ポツッと言った言葉は。

「真紀が好きなのは高野くん?」

「「…は?」」

真紀ちゃんと私がかぶった。

そして沈黙が続いた。

だんだん景子先輩が嬉しそうに、
「ちがうのね?」

「はい。違います。」

「じゃあ岸田くん?」

……え?岸田先輩?
一瞬、喫茶店のカウンターでコーヒーを飲んでる先輩を思い出して胸がチクッとなった。

「それも違いますけど。」

何故かホッとした。

「んー。その神社は一緒に行った相手と縁を結ぶっていうんだけどね……」

苦笑い気味に景子先輩が言うと

「えぇ!嘘でしょー!」

頭を抱えた真紀ちゃんを二人で大笑いした。



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