遠すぎる君
週末
私は遼の練習試合を観戦するため
学校へ来ていた。

全国大会にも出場する実力を持つ我が青蘭。
そしてエースである遼。

来月早々に行われる地区予選に向けて
今日は輝かしいプレイを披露しているはずだった。


今日の相手は強豪とはいえ
青蘭も全国区だ。
今日負けるようなら
関東大会から先へ進むことはできないだろう。

しかし、今日はたった一人が
ゲームメイクをしていた。

相手校の早川くん。

突出した実力をもつ彼に遼は翻弄され
いつもの勇姿は息を潜めた。
青蘭の誰もが手も足も出なかった。

煙に巻かれたように試合が終わる。

青蘭は点を取ることなく
今季初めて負けた。



練習試合とはいえ
この重苦しい雰囲気。

全国レベルのサッカー部には観客もたくさんいる。
サッカー好きの教師や関係者も加わったりして
サッカー場を取り囲む人数は半端ない。

「今年、大丈夫なのか…?」

どこからか大人の声が聞こえてくる。
観客全員が同じことを思った。

そしてその不安より大きな黒もやが
サッカー部のメンバー全員を覆っていた。




彼の胸中を推し量ることはできない。

中学最後の大きな大会。
これに向けて
サッカーを何より優先させてきた彼らにとって

今日の敗北は厳しい。

そして今エースとしてやるべき事は
恋愛事ではなかった。







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