遠すぎる君
誕生日には美幸のメールから始まった。
去年と同じ。

『夏休みに入ったら遊びにいこうね♪そのときプレゼント渡すね~』

久々に会いたいなぁ。

『永沢くんとの進展具合も教えてね~』
と返しておいた。

学校へ行くと真紀ちゃんと早苗ち
ゃんからプレゼントが。

早苗ちゃんのプレゼントはお手製クッキー。

それがめちゃくちゃ美味しくて沢山あったので
放課後はクッキーをお裾分けしようと部室へ行くと、
岸田先輩が長い足を組んで雑誌を読んでいた。

「お?今日はどしたの?なんかやんの?」

今日は特に部活はない。

「いえ、誰か居たらお裾分けを……と思いまして。」

ゴソゴソと鞄を漁ってクッキーを出し、机に置いた。

「手作り……?作ったの?」

「あ、いえ、友達が~貰ったのでお裾分けです。」

「なんだぁ~友達か…。」

ま、いただくわ
と一つ手に取った。

なんとなく残念そうに見えたのは気のせいだろうか。

「他の…先輩方は?」

「あぁ。あいつらは志望大学が同じだから
一緒に過去問題集見に行くとかで本屋へ行った。そのまま帰ると思うけど。」

「それで岸田先輩は二人のために時間潰しですか?」

「あいつらとまた出くわしたら
家の近い俺と高野が一緒に帰ることになるだろ。」

ほんと世話焼けるよな~

そこでハッとして
「やっぱ、わかってた?」

「え~っと、高野先輩が景子先輩のこと好きなんだろうなぁとは思ってました。
まさか景子先輩がってのにはビックリしましたけど……」

ハハハッと笑った。

「一年以上この状態だぜ~いい加減にしてほしいよなぁ……っと」

クッキーの袋の中から取り出したカードらしきものを手に取って

「なんか書いて……?ハッピーバースデー?
おまえ、もしかして誕生日?」

あ、しまった。
気を使わせないように持ってきたのにバレちゃった。

「あ、実は……そうなんですよ。」

またハハハと笑った。

でも岸田先輩はそのカードをじっと見て
渋い顔をしている。

「そうか…しまったな…」

ブツブツ言っている。

ふと顔をあげて
「今日、時間ある?」

と突然。

「あ、今日はバイトなんです。」

「じゃあ明日は?」

「明日は部活ですよ。最後にツアーのまとめ。」

「じゃあその後。」

あるといえばある。

「誕生祝いになんか奢ってやるよ。」

かわいい爽やかな笑顔で言うもんだから
つい「ありがとうございます!」
と遠慮なく言ってしまった。
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