遠すぎる君
「バイト行くんだろ?送ってくわ。」

岸田先輩は雑誌を鞄に入れて立ち上がった。

「え?いいですよ。先輩たちに出くわしますよ。」

「大丈夫。反対方向だし。それにコーヒー飲んで帰るから。

それにしても誕生日にバイトって……寂しいな!」

バンッと背中を叩かれた。

「痛~!もう!イヤなこと言わないでくださいよ!」
 
悪い悪いと謝ってはいるけれど
岸田先輩はメチャクチャ笑ってる。

「ま、とにかくオメデト!」

去年と違う誕生日に自然と笑顔か出てくる。
素直に嬉しく思った。

「ありがとうございます。」

それからは他愛ない話をして
明日どうするか一緒に考えたりして
喫茶店まで肩を並べて歩いた。

今日はバイトへの道のりが短く感じられた。


そんな私たちを見ている人がいるなんて思ってもみなかった。
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