遠すぎる君
教室へ行くと
予想はしてたが
真紀ちゃんが走って寄ってきた。

「ちょっと~しおりちゃん!」

「おはよう。」

「おはよう!ってそうじゃないでしょ!」

鼻息が弱冠荒い。

「昨日はさ!一応気遣って
メールもしなかったんだからね!
今日は説明してもらうよ!
私昨日寝てないんだから~」

私もあんまり寝られなかった。

「あ、そのキーホルダーつけてくれてるんだね!」

と、私の鞄にぶら下がっている透明なイルカのキーホルダーに目をやった。

「うん!ありがとね!すごく嬉しかったよ!可愛いよね~これ…」

「よかったぁ。気に入ってくれて…
でも!そんなことでもなくて!」

「おーい宮崎と中田、席つけ~ホームルーム始めんぞ。」

と担任の先生が入ってきた。

「はぁ~い……しおりちゃん、後で絶対聞かせてよ。」

私は苦笑いして席に着いた。

先生が前で何かしら喋っているが私は上の空。



昨日の先輩の言葉を思い出す。

どうしよう……

昨日からそればっかり。

確かに先輩は素敵だし、私にはもったいないくらい。
今の私のお気に入りでもある。

でも付き合うとなると……

遼の事を考えてしまう。
もう終わったのに
もう前に進んでいい筈なのに
さらに前に進もうとすると遼の顔が過る。

ほんと、どうしよう……


別れ際
「今すぐ返事はいらない」
と言われた。

でもいつまで待ってくれるだろうか。

私はいつになったら答えを出せるんだろうか。

告白は純粋に嬉しかった。

でもいい返事ができなかった。

まだ先輩のことをよく知らないからかもしれない。

今どうこうすることもできなくて
また溜め息が出る。
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