遠すぎる君
星蘭が負けた。1点も取れずに…

俺は呆然としていた。

試合は相手校の早川というヤツに翻弄されたまま
自分達のゲームが出来ないまま終わった。

試合の勝敗は誰のせいでもない。

ただ、俺たちにはやることがある。

このまま終わらせてはいけない。

サッカーをやるために入った青蘭。
そこで曲がりなりにもエースという立ち位置を掴んだ。
地区予選までに出来ることはある。

必ず全国に。

それだけを胸にチームメイトと気合いを入れ直す。

俺たちには時間がなかった。

そして余裕がなかった。

負けて情けない姿をしおりに曝している場合じゃない。

試合後、待っていてくれたしおりに伝えた。

しばらく一緒に帰れない。

練習後もやれることはある。
それに付き合わす訳にはいかない。

しおりは悲しい目をしていたが
わかっていてくれたようだった。

しおりのためにも必ず全国へ

その時は俺の中にはそれしか選択肢はなかった。

でもその後
しおりの顔からあのふんわりした笑顔が消えた。
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