遠すぎる君
高野先輩は結局
合格祈願のお守りだけを購入した。
景子先輩に「お前も買わないか?」と言っていたけど
「私は要らない」と一蹴されていた。
ホンの少しシュンとなった高野先輩。
わかります……お揃いしたかったんですよね……
それにしてもほんと、今日の景子先輩は変だった。
この歴史探求ツアーは終わり、
後日、内容をまとめようということになった。
部活存続の為に学校側に提出する
一年に一回のレポートだ。
まだ日も落ちてない時間に
とりあえず最寄り駅で解散することになった。
岸田先輩と高野先輩は同じ方向の電車に乗り、
私たち女性組はお茶して帰ることに。
というのも、景子先輩が誘ってくれたから。
高野先輩が「俺たちも…」と言ったのを
「女子会の邪魔しないで」とすげなく断った。
解散場所に近いファーストフード店に入ると
夏休みの夕方ということもあって
若者たちがごった返していた。
トレイに乗せたドリンクを持って
ようやく空いた四人席に座る。
「今日はどうしたんですか?」
景子先輩は眉間にシワを寄せてズズッとオレンジジュースを飲んだ。
「あいつ、彼女できた」
「「えぇっ?」」
まさかの!
「誰です?」
「……っていうか、無いでしょ。」
キッツイ一言を堂々と……真紀ちゃん。
「私が理科クラブから拉致って歴史研究部に監禁して朝から夕方まで攻勢かけてるってのに、
知らない女にかっ拐われた。」
バンッと机を両手で叩いた景子先輩は泣きそう。
でも溢れそうな涙を堪えてるのは
目の前にいるのが後輩二人だからか、
それとも高野先輩に振られた怒りからか。
「ほんとにほんとに彼女が出来たんですか?」
「私が何年あいつを見てたと思ってんの?そんなん見たらわかるわ。
相手は大学生。あいつの近所のお姉さんよ。岸田くんの幼馴染みらしいわ。」
「大学生……」
「完敗よ。この私も色気のある二十歳過ぎの女には手も足も出ない。」
「……」
私たちは何も言えなかった。
だって状況が全くわからない上にその彼女とやらも見たことない。
迂闊に慰めも励ましも言えなかった。
しばらくうつむいてた先輩は「ごめんね。付き合わせて。」と言い、立ち上がる。
すると軽快な電子音が。
「あ、私かな」
先輩が鞄から携帯を取りだし、メールらしく画面を見た。
その顔が一瞬強張った後、目を大きく見開いた。
そして、ワタワタと携帯の画面を操り出した。
どうやら誰かの電話番号を探しているみたいだ。
そしてそれを右耳に当てると
「真紀、しおり!ごめんだけど私帰るから!
また連絡する!」
と言って店を出ていった。それはもう、慌てに慌てて。
真紀ちゃんと私は
さっきの話の内容もそうだったけど
今の景子先輩の様子がイマイチ飲み込めなくて
トレイを持ったまま立ち尽くしていた。
合格祈願のお守りだけを購入した。
景子先輩に「お前も買わないか?」と言っていたけど
「私は要らない」と一蹴されていた。
ホンの少しシュンとなった高野先輩。
わかります……お揃いしたかったんですよね……
それにしてもほんと、今日の景子先輩は変だった。
この歴史探求ツアーは終わり、
後日、内容をまとめようということになった。
部活存続の為に学校側に提出する
一年に一回のレポートだ。
まだ日も落ちてない時間に
とりあえず最寄り駅で解散することになった。
岸田先輩と高野先輩は同じ方向の電車に乗り、
私たち女性組はお茶して帰ることに。
というのも、景子先輩が誘ってくれたから。
高野先輩が「俺たちも…」と言ったのを
「女子会の邪魔しないで」とすげなく断った。
解散場所に近いファーストフード店に入ると
夏休みの夕方ということもあって
若者たちがごった返していた。
トレイに乗せたドリンクを持って
ようやく空いた四人席に座る。
「今日はどうしたんですか?」
景子先輩は眉間にシワを寄せてズズッとオレンジジュースを飲んだ。
「あいつ、彼女できた」
「「えぇっ?」」
まさかの!
「誰です?」
「……っていうか、無いでしょ。」
キッツイ一言を堂々と……真紀ちゃん。
「私が理科クラブから拉致って歴史研究部に監禁して朝から夕方まで攻勢かけてるってのに、
知らない女にかっ拐われた。」
バンッと机を両手で叩いた景子先輩は泣きそう。
でも溢れそうな涙を堪えてるのは
目の前にいるのが後輩二人だからか、
それとも高野先輩に振られた怒りからか。
「ほんとにほんとに彼女が出来たんですか?」
「私が何年あいつを見てたと思ってんの?そんなん見たらわかるわ。
相手は大学生。あいつの近所のお姉さんよ。岸田くんの幼馴染みらしいわ。」
「大学生……」
「完敗よ。この私も色気のある二十歳過ぎの女には手も足も出ない。」
「……」
私たちは何も言えなかった。
だって状況が全くわからない上にその彼女とやらも見たことない。
迂闊に慰めも励ましも言えなかった。
しばらくうつむいてた先輩は「ごめんね。付き合わせて。」と言い、立ち上がる。
すると軽快な電子音が。
「あ、私かな」
先輩が鞄から携帯を取りだし、メールらしく画面を見た。
その顔が一瞬強張った後、目を大きく見開いた。
そして、ワタワタと携帯の画面を操り出した。
どうやら誰かの電話番号を探しているみたいだ。
そしてそれを右耳に当てると
「真紀、しおり!ごめんだけど私帰るから!
また連絡する!」
と言って店を出ていった。それはもう、慌てに慌てて。
真紀ちゃんと私は
さっきの話の内容もそうだったけど
今の景子先輩の様子がイマイチ飲み込めなくて
トレイを持ったまま立ち尽くしていた。