遠すぎる君
俺は2年になった。

先輩はまだいるけれど、何となく、試合にも出させてもらえそうな位置につけている。

今年の夏にはレギュラー出場できるか。

俺は教師になりたかったので、出来れば今年に結果を出したい。
そして3年は受験に専念したい。

今年の三年の先輩はかなりの強者揃いだから、
全国に行けるとしたら今年。
だからこそレギュラー獲得は難しいのだろうけど。

今年、試合に出れたらしおりは見に来てくれるだろうか。
それを励みに頑張ってきた。
年末からそれだけが楽しみ。

あまりにも不純な動機に、サッカーバカの俺でもビックリする。

去年より浮わついてんな、俺……

そんなことを思ってると奈々先輩がバシンと背中を叩いてきた。
「おーっす!なにシケタ面してんの?」

「いってぇ…なんすか?」

「買い出し!付き合って~」

「何でですか?1年マネにやらせりゃいいでしょ?」

「ナニ言ってんの?まだ早いっしょ?」

「じゃあお供は1年使ってくださいよ……」

「え~高坂くんがいいよ~。慣れてるじゃん。」

慣れてるって……慣れてるけど……先輩のせいでしょ?

「俺はムリっす。」

またしおりに見られたらやだし。

「あ~あっそう?今までの恩を仇で返すの?」

「なんすか?恩って……」

「1年の時、いち早く怪我に気付いて手当てしてあげたこととか、一人だけの1年レギュラーに特別にスポドリ作ってあげたこととか…」

すいませんが、それはフツーにマネの仕事じゃね?
とは言え、お世話になってるのは事実で。

「わかったよ。今回だけ。次回は1年マネにやらせてくださいよ。」

「了解!愛してるよ~じゃ、帰りね!」

敬礼して去っていった。
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