遠すぎる君
「愛されてんね~」

中学から同じサッカー部の杉本が囃し立てる。

「はぁ?」

「奈々先輩はお前にベッタリだな!」

「ナニ言ってんの?お前。」

「やっぱりニブチンなんだな…」と苦笑い。

「恋愛スキル、ゼロだな」「あの人はマネだろ」

「マネでもなんでも好きになるのはアリだろ?」

そんなこと言われたこともねーけど。

「お前がそんなんだから奈々先輩も言えねーわな。」
アハハと笑われる。

「どっちにしてもお前は元カノが好きなんだもんな」

グッと喉に何かが詰まる。

「おま!なんだって?!」

杉本に食って掛かるが、ヤツはニヤけている。

「わからいでか~ハハハ」

なにィ!俺ってそんなに解りやすいのか!

笑っている杉本は、フッと真顔になり「で、どうなの?」
と聞いてきた。

苦虫を潰したような顔で俺はぶっきらぼうに答えた。
「なにがだよ!」

「だから…元カノ…会ってんの?」

「会うわけねーだろ。……彼氏持ちだし。」

そこまで言うとドーンと落ち込んだ。
自分で言葉にすると真っ黒い大きな壁が目の前に立ち聳える。

「彼氏……?マジかよ……」

「…俺なんかよりかっこよくてインテリのヤツだよ。」

「……そっか……フラれたか…」

そこでまた俺は落ち込む…

アイツとは仲良くやってんのかな…
年末、聞けなかったもんな。いや、俺の話しかしなかったもんな。
俺って……バカ……

もしかしたら付き合ってないのかもしれないのに。

そんな淡い期待を胸に
いつか応援に来てくれるしおりと楽しく話せる未来を夢見ていた。

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