遠すぎる君
あの練習試合から2週間
そして遼が私を見なくなって2週間

遼を含むサッカー部は
朝も夕方も土日も休みなく練習していた。

そして遼のいない生活にも慣れてきた。

教室で美幸とお弁当を食べ、
購買へジュースを買いに
渡り廊下に差し掛かったとき、

何気に窓から外を見ると
遼と何人かがサッカー場でフォーメーションの練習をしているのが見えた。

昼休みも練習してるのか…
道理で教室に居ない訳よね…

遼の姿を見るのはほんとに授業の間だけ。

ぼんやり見ながら歩いてると

「高坂くん、本腰入ったね。」

遼の姿を見ている女の子3人が
小さな声で話すのが聞こえた。

「彼女できてから
練習後のレギュラーミーティング、適当だったらしいよ。川崎が言ってた。」
「浮わついてんなってOBに言われたらしいもんね~」

「でももう大丈夫じゃない?別れたんなら。」
「さっちゃん、チャンスだよ。」
「…大会終わるまではムリだよ…」
「だよね~」


胸が苦しい。

こんなこと言われてるんだ。知らなかった。
私と遼が幸せな時間を過ごしていたから
負けた?

違う!違う違う!

遼はそんな人じゃない!
浮わついてなんかいないし
適当にサッカーしたりしない!
いつも全力投球なんだ!

…だから今は私と会ってくれないんだ。
待ってたとしても一緒に帰ったりしないんだ…

彼への間違った評価に腹が立った。

そして
私達が別れて喜ばれていることに
胸が痛くなって涙が込み上げてきた。

「別れてないっつーの。バカじゃん。」
眉間にシワを寄せて美幸はポソッと言ってくれたけど

涙は溢れてきて
その涙が3人組の言葉を肯定してるように思えた。




< 8 / 136 >

この作品をシェア

pagetop