遠すぎる君
早足で歩いてしばらくすると、奈々先輩が心配そうに気遣う言葉をくれた。
「気にすること無いよ。山下君は高坂くんを妬んでるだけ。
部長だって、高坂くんに期待してる。」
俺が何も言わないのを不安に思ったのか、話続ける。
「彼女の事だってさ……高坂くんがサッカーを蔑ろにしてるとは思えない。終わった後だってあんなに練習してるのに。」
中学からそのまま上がってきた部員が殆どだ。
自分達が引退した後の俺の学年の失態を知っているんだろう。
どんなにあれから頑張ったのか、先輩たちは知らない。
中学の顧問の先生や、今の部長は
結局は最後の試合を評価してくれたけど。
だけど、「部長だった高坂に彼女ができた途端にチームとして弱くなった」と未だに批評する人間は多い。
「くそっっ!」
俺は足元にあった小さな石を蹴飛ばした。
奈々先輩や部長は理解してくれている。
だけど、俺はもっともっと頑張らないといけないんだと決意を新たにした。
しおりの為にも。
そんな俺を奈々先輩は申し訳なさそうに見つめていた。