遠すぎる君
ニヤニヤしている私をチラリと見て、美幸は溜め息をついた。
どうやら、自分が劣勢なのが気にくわないらしい。
「あんたはどうなの?」
「え?あ、あぁ……先輩……ね。えっと、どこから話そうかな……」
「違うわよ。……高坂遼のことよ。」
えぇ?!
声に出さず、椅子の背もたれまで仰け反った私に美幸も目を真ん丸にしている。
「リアクション大きいね……しおりにしては。」
フォークを持ったまま、動きを止めてこちらをじっと見ていた。
だって、だって……なんで、遼?
先日のことだって何にも話してないし、遼が美幸に何かを言ってるとは思えないのに。
フォークでケーキをツンツンとつつきながら、美幸はあさっての方向を向いている。
「あんたら、わかりやすすぎ……」
「あんたら……って」
「あんたと高坂遼」
「…………」
「昨日の月曜日、あいつに校舎で会ったらさぁ……なんかスキップしそうな勢いで登校してきて、私に満面の笑みを向けたワケ。これは、何を意味するの?」
「え…………知らないけど…」
「日曜日、県大会無事優勝したのはわかるけど、そんなの市大会だって優勝してるし?」
「あ、スターティングメンバーに入れたからじゃない?」
焦ってそう告げたら美幸は黙った。
少しの沈黙の後、こう呟いた。
「語るに落ちたわね」
「え?」
「あんた、それいつ知ったの?」
「な、何を?」
「とぼけないでよ~高坂遼のスターティングメンバー入りした事よ!違う高校のあんたがね?」
うっ……
確かにそんな身内の話を私が知ってることはおかしいだろう。私は項垂れた。
まだ何も言える状態ではなかったから……日曜のことは私の中だけで秘密にしておきたかったのだ。