裏ギフト
だけどそれは時々、可愛そうな自分を演出する時に最高の材料にもなっていた。


ノロノロと歩いてようやく下駄箱までたどり着いたあたしは、スリッパにはき替えていた。


「おはよう、侑理!」


そこに声をかけて来たのはクラスで一番仲のいい犬飼結香(イヌカイ ユイカ)だった。


結香とは高校に入ってから友達になったが、今ではひなたの次に仲の良い存在だ。


「おはよ、結香」


あたしが結香のお気に入りの香水のにおいを感じながら、そう返事をした。


結香はあたしよりも5センチほど背が低く、クリクリとしたチワワのような目をしている。


可愛らしいという言葉をそのまま形にしたような結香は、クラスでも人気者だった。


結香と一緒に教室へ向かっていると、前からひときわ目立つ男子生徒が歩いて来た。


永遠だ。


あたしは思わず歩調を緩め、少しだけ猫背になった。


結香と並んでいると、160センチの自分が大きく見えるからだ。


「2人ともおはよ」


永遠はそう言い笑顔を浮かべて手を上げる。


「おはよう、永遠」


「おはよう、永遠君」
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