裏ギフト
本当のところはどうなのか知らないが、あたしはそう返事をした。


父親がいない事の罪悪感なんて、感じてほしくない。


「そう? それならいいけれど……。最近の侑里はいつも楽しそうだから、心配しちゃうのよ」


「どういう意味?」


あたしは首をかしげてお母さんを見た。


娘が楽しそうにしているのはいい事だ。


「無理して楽しもうとしているのかなって。お母さんの考えすぎならいいんだけれど」


その言葉に、あたしはドキッとする。


無理して楽しもうとしている。


決してそんな事はないのだけれど、なぜか図星を疲れたような気持ちになった。


「無理なんてしてないって。お母さんは気にし過ぎなんだよ」


「それならいいんだけど」


そう言い、時計に視線をやるお母さん。


もう出かける時間だ。


「ほら、遅刻しちゃうよ」


「そうね。じゃぁ家のことお願いね」


「うん。いってらっしゃい」


あたしは軽く手をふり、お母さんを見送ったのだった。
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