裏ギフト
「結香、大丈夫?」


あたしはそっと結香に近づき、その背中をさすった。


虫が苦手だということはわかっていたけれど、まさかここまでとは思っていなかった。


嘔吐するということは虫の見た目が相当嫌いなのか、過去にトラウマがあるのかもしれない。


「大丈夫だよ……」


青い顔をした結香が顔をあげてそう言った。


「あの2人最近悪ふざけが行き過ぎてるよね」


あたしはそう言いながら、結香を支えて立たせた。


もちろん、結香の虫嫌いを教えたのはあたしだけど。


「あたし、虫はどうしても苦手なの……」


廊下へ出てトイレへと向かう途中、結香がそう言った。


「どうして?」


「昔……小学生の頃イジメられてて……給食に虫を入れられた事があって……」


そう言いながら、結香はその時の事を思い出したかのように涙を流した。


「奥のほうに入れられてたから、あたし……それに気づかなくて……!」


なるほど。


それで虫を食べちゃったのか。


あたしは笑い転げそうになるのを我慢して、結香の背中をさすった。
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