裏ギフト
「どうして離婚したの?」


「親父の暴力」


「じゃぁ、お父さんとはあまり会わなくなった?」


「あぁ。僕たちに近づかないように言われてるから」



「寂しい?」


「全然」


テレビ画面に視線を向けたまま、あたしたちは会話を続ける。


翔真の言葉に抑揚はなく、聞かれたことにただ淡々と義務のように答えている。


本当に、両親に対してなにも感じていないように見える。


「お母さんは働いてるの?」


「あぁ。稼ぎが良いからって飲み屋で働いてる」


飲み屋って、普通の居酒屋とかじゃないんだろうな……。


そう思っていると、翔真は何かを察したように口を開いた。


「しょっちゅう男の家に泊まりに行ってる。戻ってきたら札束持っててさ、俺に何万か渡して『これで好きなもの買いなさい』って言うんだ」


あたしは返事ができなかった。


静かに呼吸を繰り返し、翔真の次の言葉を待つ。
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