裏ギフト
「『父親がいないからって不自由な思いはさせない』って。それが母親の口癖だ」


「……お父さんから慰謝料はもらってないの?」


「母親が断ったんだ。金であの男に縛られるのは嫌だからって」


そう言い、翔真は自分の母親をバカにするように鼻で笑った。


「だけど、翔真はお母さんのお金でここまで育ってきたんでしょ」


「そうだ。その通り。だから僕は立派にならなきゃいけない。バカな母親がここまで素晴らしい子供を育てたんだと、周囲を見返してやるんだ」


翔真はそう言い、あたしを見た。


その目の奥には強さが宿っている。


あぁそうか。


翔真はお母さんをバカにしているんじゃないんだ。


ちゃんと感謝している。


そしてそれを勉強という形で返そうとしているんだ。


あたしはテレビに視線を戻した。


番組は切り替わり、夕方のニュースが流れ始めた。
< 284 / 382 >

この作品をシェア

pagetop