裏ギフト
そう思い、階段を駆け降りる。


そのままの勢いで玄関を開けた時、あたしは腕をつかまれて立ち止まってしまった。


「なにをする気だ?」


翔真があたしの腕を掴んだままそう言う。


「あの人……ギフトを持ってきている人と話がしたい」


「どうして? 相手は荷物を運んで来ているだけだし、犯人の手掛かりを教えてくれるとは思えないけど?」


翔真の言葉にあたしは奥歯を噛みしめた。


そんなのわかってる。


犯人の事を聞きだすつもりなんてない。


でも……この気持ちを他人にどう言えば伝わるのか、あたしにはわからなかった。


きっとこの間にあの人はどこかへ行ってしまっただろう。


あたしはフッと体から力が抜けるのを感じた。
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