裏ギフト
「どうやって帰るんだ?」


「上履きで帰る」


あたしはそう答え、ローファーを手に持ったまま歩き出した。


「おい、ちょっと待てって! なぁ、今日泊まっていいんだろ!?」


あたしがイジメられていることには興味がないようで、翔真の話題はギフトへと切り替わった。


「ダメだって言ってるでしょ?」


振り向き、翔真を睨み付ける。


いくら優等生の翔真でも、男の子だけで泊まりにくるなんてきっと許してもらえない。


「ローファー、買ってやろうか」


翔真がそう言いヘラヘラと笑う。


「何を言ってるの?」


「だから、新しいローファーを買ってやるよ。だから今日は泊まり、な?」


その交換条件に、あたしははらわたが煮えくり返るのを覚えた。


翔真はあたしの家が母子家庭だとわかっている。


わかっていてそんな事を言っている。


それだけならまだいいが、翔真の家だって片親だったハズだ。


それなのに見下されている。


そう感じた。


「バカにしないでよ!!」


あたしは翔真へ向かって怒鳴ると、踵を返して走り出したのだった。
< 344 / 382 >

この作品をシェア

pagetop