冬の約束
<<爽side>>
くそ。あいつ、何処行ったんだよ。
教頭に連れていかれたきりで、どこにもいねぇ。
「「「キャーー、せんぱ~い!!!こっち向いてーーー!!」」」
あー、あいつ居ねぇと周りがうるさくてたまんねぇ。
うわー、囲まれた。
これじゃ、探せられねぇじゃねぇか。
あれ.....?
あの走ってるチョコレートブラウンのストレートヘアって.....居た!!
「ちょっと、退いて欲しいな。美彩が居たから、道をあけて??」
王子スマイル。
自分が自分で気色悪い。
けど、効果はあったっぽい。女子がバタバタと倒れて通りやすくなった。
オレは、美彩の後を追った。
「おい!!美彩!!!」
「えっと..そ....う............?」
振り向いた美彩は涙でボロボロだった。
「..........っ....!!」
抱きしめたくなる衝動を抑えながら、聞いた。
「どうしたんだよ!!なんで泣いてんだよ!?」
「あの..ね.....」
美彩が、言いづらそうにしてる。
「あ、わかった!!俺と少しの間、離れててさびしかったんだろ!!」
美彩が本当に泣いてる理由を少しでも言いやすくなるように...
美彩が笑えるように.....
その為なら、俺は....
「ちがうし!!」
見つけてから初めて笑った美彩。
涙がまつげにひっかかっていて目元がキラキラしてる。
「じゃあ、何だよ。」
「....えっと、あの......その。」
やっぱり、言いづらそう。
美彩は顔を伏せたが、すぐに顔を上げた。
「実はね、学校変わるらしくて、爽が居なくて寂しくなっちゃって!!
ちなみに、高校名はねぇ....確か..谷華山...付属高校だっけなぁ??」
『まだ、ほかにも言いたいことがあるんだろ??』
そんな言葉は、喉で詰まって出てこなかった。
すごく何かを溜め込んでいる苦しそうな笑顔。
俺はそんな顔みたくない。
けど.....
「やっぱ、そんなところだと思ったよ.....!!」
俺は必死に笑った。
美彩に何かをばれないように....
「美彩。今日の午後4時にいつものところ、来て!!」
これが最後かもしれないと思うと、自然に口が動く。
「うん??わかった。どうしたの?何かあるの??」
すごく不思議そうに首を傾けている。
.....かわいい。
「行ってから話す...だから絶対来いよ!!」
「...?.....うん。了解!!」
美彩はそう言った後、ふらふら歩いていった。