天敵なキミに恋をした
しばらくすると宮田先生が音楽室へ来て、みんなに練習を中断することを告げる。
「アルトサックスの原さんが退部しました。アルトはなしでコンクールに出ようと思うのでーーおや、大海さん、どうかしました?」
宮田先生が静かに手を挙げた亜美先輩に問う。
「私、心当たりがあります。天才的な才能がある、アルトサックス奏者を。」
相沢くんのことだ。
一瞬でそう理解した。
「そうはいわれても、今更練習を始めたところで…」
先生は困り顔だけど亜美先輩は押す。
「お願いします。私だって最後のコンクールくらい完璧な状態で出場したいです。
そして彼は、本当に信頼できる人ですから。」
瞳先輩の人望は厚い。
こんな、必死に頼み込む亜美先輩は初めて見た。
だからだろうか、先生も折れた。