天敵なキミに恋をした
『…っ……俺もう行く。じゃあな、奏多。』
兄貴はそう言って俺の前から去る。
初めて自分が無神経だと気づいた瞬間だった。
兄貴からしたら弟の俺に抜かされただなんて嫌に決まってるのに俺は毎回兄貴の気持ち考えずに行動してた。
『兄貴、コンクールのときはごめん。』
家に着き、兄貴に謝る。
すると兄貴はバンッと机を叩いた。
『なんなんだよ、おまえは。そっとしておいてくれたらいいものを掘り返すとか。嫌味なの?』
初めて兄貴が俺にキレた。
『違う。ただ単に謝りたくて……』
『ふーん、僕がお兄ちゃんより上手くてごめんなさいってこと?ふざけんじゃねぇよ。』
兄貴は俺にを向ける。
『いいよな、才能あるやつは。少し努力しただけでその何倍も努力してるやつより上達するもんな。』
俺に才能なんてねぇよ。やめろよそういうこと言うの。
俺は兄貴に憧れて吹奏楽に入ったんだから。