1周まわって、好きかもしれない。
ふと凛子の顔が頭をよぎって、少し胸がモヤっとしたのはなぜなのか。
きっと気のせいだ。
「瀬見くん」
「ん?」
「ありがとう、案内してくれて」
「ああ、いや、全然」
そのまま2人で下駄箱に向かう。
靴を履き替えて、河谷さんの方を見た。
「家、どこ?」
「あ、駅の方で…」
「送ろうか?」
「あっ、大丈夫!ありがとう!」
ふわり、と笑うのも、謙虚なのも、ますますゆりちゃんみたいだなぁ。なんて考えてることがバレたら、気持ち悪いと思われるだろうか。
…思われるに決まってるな。
「そっか、じゃあ俺はここで…」
「あれ、恭介?」
聞きなれた声に振り返れば、悪魔。じゃなくて、凛子。
ふわふわのミルクティー色の髪。
短いけど品のある長さのスカート。
ワイシャツの袖はめくって、キャメル色のカーディガンを着ている。