1周まわって、好きかもしれない。



帰り道は、何を話していいかわからないから沈黙。というかなんか気まずくて。

少し後ろを歩く河谷さんは、何か考えているのか少しぼーっとしている。




「…ここまででいいよ」



河谷さんの家の近くらしい場所まで来て、少し後ろで彼女が立ち止まった。

それにつられて立ち止まり、後ろを振り返る。




「…あのね、瀬見くん」



その高くて綺麗な声が、少し震えた。





「私、瀬見くんの彼女になりたい」





思いもしなかった言葉に、目を見張る。

うつむいて、きゅっとスカートの裾を握った彼女の小さな手を、やけに鮮明に覚えてる。




「…こ、これから好きになってもらえるように頑張るから!

だから、その…今日は変なこと言ってごめん!」




それだけ言って、俺を追い越して家に向かって帰って行く河谷さんの背中が、夕焼けに染まる。



大好きだったゆりちゃんにそっくりな、河谷さん。

可愛いし、優しいし、おっとりしてるし。


理想的な女の子から告白されたのに、やけに冷静な自分に気づいてしまった。




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