1周まわって、好きかもしれない。



実際、寺田に陰口を言われるまでの凛子は、男遊びなんか全くしなかったし、あんなに嫌いなものは嫌いだとはっきり言えるタイプではなくて。


まあ俺に対しては少しわがままなところはあったけど、むしろ自分の意見は飲み込んでしまう子どもだった。



仲の良い友達だと思っていた寺田たちから悪口を言われていたこと、男子と喋るために凛子を使っていたこと、そして女子たちから無視されたこと。


あの頃の凛子にはかなりショックだったことは想像がつく。





「あんな奴のために泣かないし」




なんて、俺に強がっていたけれど。

自分の部屋で布団にくるまって、ずっと泣いてたのを俺は知ってる。


自分にも強がって嘘ついて、もう自分は強くなったと思ってるけど、本当は今だって寺田に会うだけで泣きそうになるのも、知ってる。



凛子は知らなくても、俺だけは凛子の弱さを知ってる。

誰かが知っててやらないと、凛子はいつか壊れてしまう。


悪魔みたいに図太いくせに、本当は弱くて、繊細なことも、ぜんぶ。




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