1周まわって、好きかもしれない。




凛子はどんな気持ちでドアの前にいるのか。


中学生の頃の記憶が蘇って、足を踏み出したした瞬間。





ーガラッ




ドアを開けたのは、凛子だった。




「恭介はモノじゃないよ」




凛子が聞いているなんて思っていなかったんだろう、教室の中はしんと静まり返った。




「譲るとか、モノみたいに言わないで」




自分の陰口を言われたことでなく、俺のことで怒っている凛子に。


きっと怖いのに、悲しいのに、堂々とドアを開けた凛子に。


見ないふりしたトラウマを突きつけられて、きっと心の中では泣いている凛子に。




こみ上げた気持ちは、なんと呼んでいいのかよく分からないけれど。


凛子が好きだって、ただそれだけなんだと思う。




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