1周まわって、好きかもしれない。



「恭介はモノじゃないよ」




ガラッと音を立てて開いたドアに、私の言葉に。


驚いた顔してこっちを見る、河谷さんたち。





「り、凛子ちゃー…」


怯むみんなを、まっすぐ見据える。

怖くない、悲しくない、傷ついてない。



こんな悪口にいちいち傷つくほど、私弱くない。




「イケメンにばっかり手出して、ぶりっ子してんなよ!」

「こんな女に負けるなんて、由莉が可哀想!」


河谷さんの友達らしき女の子たちが、口々に言う。



その姿が寺田理沙と重なって。

その光景が、中学生の頃の私と重なって。



1人で家のベッドでいっぱい泣いた。

恭介にすらバレないように泣いた。


本当はずっと寂しかったし、怖かった。



私だって彼氏を取っ替え引っ替えしたいわけじゃない。


だっていつか私のことを、ちゃんと好きになってくれる人がいるかもしれないじゃん。


今度こそうまくいくかもって、毎回思っちゃうんだもん。



それでもみんな、私じゃなくても良くて。

可愛い女の子なら、だれでも良くて。



そのたび痛む胸を、見ないふりして来た。




< 218 / 293 >

この作品をシェア

pagetop