1周まわって、好きかもしれない。




『恭介くん、ごめんね、待った?』





ゲーム機の小さな液晶の中で、世界一かわいい女の子が喋る。



全然待ってないよ、という回答を選択すると、ふわっと笑う彼女。



…可愛い。




この子は、俺の彼女の姫野ゆりちゃん。



今流行りの恋愛シュミレーションゲーム『学園おひめさまっ!』の中でも2番目に人気のキャラクターだ。



誰がなんと言おうと、次元の壁という試練があろうと、俺の彼女だ。




現実の男とデートに行く凛子より、ゆりちゃんとデートをする俺の方が幸せな自信がある。


いや、むしろ自信しかない。





しばらくゲーム機と睨めっこしていると、




「いやぁ、可愛い」



ゆりちゃんのあまりの可愛さにそう呟いた瞬間大きな音を立てて突然開け放たれたドア。





「気持ち悪…」






ベッドの上で寝ながらゲームをする俺を蔑むような目で見下ろしてくるのは、さっきイケメンと出かけたはずの凛子。



あからさまに不機嫌な凛子は、仁王立ちであたかも自分の部屋のように俺の部屋の真ん中に立っている。



デートに出かけてから帰ってくるまでの早さ。


そしてこの不機嫌さ。



…デートが不満だったんだろう。


よくあることで、その怒りの矛先をぶつけられるのはいつだって俺だ。



勘弁してくれよ…。


さっきのイケメンにため息をつく。

凛子を怒らせるのは勝手だが、機嫌をとるまでの処理はしていってほしい。





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