1周まわって、好きかもしれない。
「へえ、そうなの?
凛子」
恭介が突然振り返るから、大きな背中に隠されていた私がザッキーの目に映る。
「凛子…」
あからさまに慌てるザッキーの目を、しっかり見て。
「聞こえてなかったのかもしれないから、もういっかい言うね。
別れて」
ちっ、て舌打ちをしたザッキーは、そのまま教室の外へ。
ザッキー最低、なんて会話だけが私たちのクラスに残った。
前にいる幼なじみを見上げれば、気まずそうにこっちを見た。
だめだ、何で目頭熱いんだろう。
ショックだったから?
助けてくれて嬉しかったから?
じわ、と浮かんだ涙に気付かないふりして、何も言わずに持っていたジャージを私の頭にかぶせる恭介。
ふわり、と香るのは恭介の家の柔軟剤の匂い。