幾年時紀
目の前にいる、不思議な少女に《婆臭い》と言いかけたところで、妙な圧を感じたため、言うのをやめた。
なんとなく、少女に名乗らせるのはおかしい気がするため、自分から名乗ろうと思った。
『僕は、澤島幸希……えっと幸せって書いて希望の希……わかるかな?』
『……あぁ。』
な、なんだこの微妙な返し方。
紙や鉛筆。
書くものはあるけれど、そこまでしてやる義理はないと思った。
『あんたは?』
『…………』
答えろよ!!!
なんだか、自分だけなのって馬鹿みたいだ。
はぁ、馬鹿馬鹿しい。さっさと帰ろう。
そう、方向転換した時だった。
『私には……名前はない』
か細く、消えてしまいそうな、弱い、弱い声だった。
『は……?名前がないって……』
『…………』
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