幾年時紀
『心……うん。凄くいい名前ね……』
『お気に召したようでなによりだ』
僕はそれだけ言うと振り返る。
今度こそ家にかえ……
『なぁ……』
『…………………………』
『どうして……入口も出口もねぇんだよ……』
心は黙っていた。
ただ、どんな表情をしているのかは、この地につく長い長い髪の毛で見えなかった。
『っ!あーもう!!』
ジャキン!!!
とにかく、長くて邪魔な髪の毛を、制服のポケットに入ったままのハサミで切った。
どうして持っているのかは別として、こういう時、ほんと便利だと思う。
あれ?というか僕は……
『ちょ!?こここ幸希!?いきな、え?なな、何するのよ!』
髪を切られたこと……よりも、僕の行動が分からないのか、いや、僕の手に持っているハサミが気になるようだ。
『髪……切ろうぜ?』
< 7 / 11 >

この作品をシェア

pagetop