幾年時紀
『なぁ、どうして入口も出口もねぇの?』
心はだまる。
しかし、ハッとして口を開く。
『わから……ない』
なんだ。わからないのか。
僕はどうなる?
どうしてここに来た?
またわからない。わからない。わからない。もう聞き飽きたよ。
心、お前はなんなんだよ。
『け、ど…』
『けど?』
『ここに……人が来たことなんてないよ……あ、1回だけだけど』
『あるんじゃん』
『でも、その人は……』
『?』
心はまた黙った。
だけど、様子がおかしい。
『心?』
黙ったまま。
無視かよ。
僕はうつむいた。
『ここ……は』
心の声にハッとした。
それは、実に苦しそうで、震えていた。
なにか、隠している。
それは明確だった。
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