ホオズキ少女の嘘
朝ごはんを食べて、暇だからツムツムをやる。

明るいツムツムの音楽とは反対に、私の心はかなりブルーだった。

陸の事覚えてなかったなんて…すっごいショック…。

陸落ち込んでるかな………落ち込んでるよね。

今日来たらもう一回謝ろう…。

そう思いながら、私は「野いちご」を開く。

記憶をなくす前から日記をここに書いていたことを思い出したのだ。

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お久しぶりです。
実はこの数日間、記憶を一部、無くしていました。
今はもう記憶が戻っています。
ですが、記憶を無くしたり、話せなくなったり…。
もう…そろそろ駄目かもしれません。

もし私が死んだら…幸せになってくれる人はいるだろうか。

もし私が死んだら…喜んでくれる人はいるだろうか。

いたとしたならば、私は少し天国で嬉しく感じるかもしれません。

でも、私が死んで、悲しんでくれる人や、悔やんでくれる人、涙を流してくれる人が…もしいるのなら。

私は…死にたくないです。

1年も生きられたんだから、きっともっと生きられるって、信じたいです。

でも、どんどん減っていく体重と、ほとんどない食欲と、増えていく点滴の数を見て、もう、ホントに限界が近づいているのかな。と思います。

死んだら、また恋人や、親友に迷惑を掛けてしまいます。

迷惑掛けてごめんなさい。そう言いたいけど言えなくなってしまいます。

彼に、一緒に病気と戦おう。と言われたあの日から、今日はちょうど一年になります。

あの日から、彼が私を支えてくれなければ1年も生きていられませんでした。もしかしたら1ヶ月で死んでいたかもしれません。

でも、彼がいたから、私は元気でこの一年、過ごすことが出来ました。

一年前の私がやりたかったこと、たくさんやったと思います。

唯一出来てないのは、彼と結婚することですが、神様はそこまで待ってくれないようです。

来年で結婚出来るんだけどなぁ…。なんて思います。

きっとこの一年は、私がやり残した事をやるための一年だったんだと思います。

一年前の私は、強く願いました。せめて後一年間…一年間だけ時間をください…と。

その時の願いは、叶いました。ホントに1年だけだったけど…。

きっとそれは奇跡なんかじゃなく、神様の気まぐれなんだと思います。

やり残したことがたくさんあって、まだ死ぬことは出来ない。と思ったんです。

きっと神様は解ってくれたんですかね。

神は乗り越えられない試練を与えないとか言いますけど、完全に乗り越えられないですよね。病気で死んじゃう時なんて。

だから、覚えていなくても後世に期待したいなぁ…って。

きっと今回、悲しいことがいっぱいあった短い人生だから、次は楽しいことがいっぱいある長い人生になるんじゃないかな。なんて考えたりします。

今日でこの日記を書くのも最後かもしれません。

出来る限り毎日書こうとは思っています。

でも、もし明日死んだら更新は出来ませんね。

病気と闘っている人が、この世界にはたくさんいると思います。

そのうちの一人である私は、ただ運が悪かっただけかもしれません。

でも、病気になってからも、私は幸せでした。

この1年間、私はいろんな人に支えられて、ここまで生きてきました。人生で一番楽しい1年でした。

そんな時間を過ごすことが出来て、とても幸せです。

では。



2019/8/15

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