ホオズキ少女の嘘
<夏来side>

泣き崩れていた。

陸が来てくれればいいのに。

何で?って、別れた理由を聞きにきてくれればいいのに。

…あの暖かい温もりで抱きしめてくれればいいのに。

「なんで………わっ」

後ろから誰かに抱きしめられた。

…陸?

「来て…くれた…の…?」

もう別れたというのに。陸は来てくれた。

私はやっぱり…



この温度に安心してしまうんだ。




「…何で。」

え?

「何で別れるなんて言ったの。」

「言いたくない。」

「何で。」

…陸…怒ってる…よね。

「それ聞いたら、陸は私のことを嫌いになると思う。別れちゃったけど…嫌われるのは嫌なの。」

「嫌わないよ。何を言われても俺は受け入れる。それに…」

それに…?

「俺はまだ夏来と別れたとか思ってないから。だから理由を教えて。ダメな所なら直すから。」

陸…なんで。なんでそんなに優しいの…?




でもやっぱり、1ヶ月後に死ぬなんて言えないよ…





「嫌だ。言いたくない。」

だって、本当はまだ大好きだから。

もし陸がそれを受け入れてくれても、私が我慢できない。

陸を無理させて、我慢させるなんて出来ない。

だから…

「じゃあ何でさ。」

陸を傷つけたくないんだ。

「じゃあなんでさっき別れたくなかったなんて言ったの。」

「それは…」

だって…

「”まだ陸のことが大好きだから。”」

言葉と心の中の言葉が始めてシンクロした。

今日口に出すことは嘘ばかりだったと思う。

だから、本心を口にだせて、少し安心してる自分がいる。

「俺も…好きだよ。…っだから。別れたくない。」

そんなこと言わないでよ。

また、自分を恨みたくなる。
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