あなたが私にキスをした。
――side ユヅキ


俺は昔から、兄貴のことが大っ嫌いだった。


頭がよくて器用で穏やかで、俺は何一つ、兄貴に敵わなかった。

親父の会社だってそう、

本当は親父は兄貴に継がせたかったんだ。

でも兄貴は、俺が会社を継ぎたがっていると知ってあっさりとその権利を放棄した。

それが、俺は余計にムカついた。



レイカさんのことだって、そうだ。

本当は俺も、あの人のことが好きだったのに。





俺の、初恋の人だったのに――・・・。

< 30 / 109 >

この作品をシェア

pagetop