あなたが私にキスをした。
「おはよう、トーコ」
「あ、おはよう。トキワ」
リビングで顔を合わせたふたりは
どちらからともなくキスをした。
二人の関係に気づいたのは
一緒に暮らすようになってすぐのことだった。
もともと、
トーコちゃんが兄貴のことを『トキワ』だなんて呼び捨てすることに違和感を感じてたから、あぁそういうことかって妙に納得がいった。
そして、ムカついた。
だけど俺は気づかないふりをして
まるで何も知らない顔で
「おはよー」
と、リビングに入っていく。
ふたりは慌てて身体を離すと
下手くそな演技で、知らん顔をした。
だから、俺は思ったんだ。
今度こそ、
兄貴のものを俺がうばってやろうって。